手を振るべきだったんだろうか。

 
「民主王国」と呼ばれた、私の住む地域でも、民主党の先行きは暗い。
 その暗さを払拭しようと云うのか、私が住んでいるあたりを選挙区にしている民主党の議員さんが積極的に活動を始めた。
 まだ若い議員さんで、有権者との話し合いの場や国会での活動報告の場を頻繁に設けている。
 真面目で熱心な政治家、というイメージだ。
 
 今日も、その議員さんの宣伝カーが走っていった。
 私は歩道にいて、宣伝カーが走ってくるのを見ていた。
 助手席に人影が見える。
 いつもなら、スピーカーから流れる、
「○月×日△時より、国政報告会を行います。
 皆さま、◇◇までお揃いでお運びください」
 という案内だけが走りすぎていくところだが、助手席に人がいるってことは、議員先生、自ら手を振りに来たのか?
 そう思って、しばらく様子を見ていた。
 だが、助手席の人影が動く様子はない。
 はて……?
 首を傾げているうちに宣伝カーが近づいてきて、さーっと私の前を走り抜けていった。
 
 助手席に、議員先生の等身大上半身ポップを乗せて。
 
 いや、そりゃ何もないより良いかもしれないけどさ。
 えろげの宣材じゃあるめぇし、上半身のみのポップってどうよ?!
 生真面目にシートベルトを掛けた上半身ポップを乗せた宣伝カーを見送り、私はガックリと脱力して仕事場へ向かったのだった。
 あぁ……暑いのに、なんだか疲れたよ……