なんだかなぁ

 
 我が家の近くに、ちょっとしたホールを持った公共施設がある。
 ほかにも、会議室やら何やらを低料金でレンタルすることができるので、しょっちゅう何らかの催しが行なわれ、そのたびに近所の住人(=私たち)は、遠慮会釈なく生活道路に路駐する車や、左右を確認もせずに車道を横切る利用者に悩まされることになる。
 タクシーの待ち列で車道を塞がれたり、利用者が乗降する間、建物前に路駐してドアを開け放してる、なんてことも日常茶飯事。
 低料金で利用しやすいためか、障害者のためのイベントなどもよく開かれるのだが、そんなときには、路駐した車に乗降する車椅子利用者も散見されて、そのへんを走る私たちが、通常の三倍以上も気を遣うことになる。
 
 でもね。
 以前から、気になってたんだ。
 建物の前は、比較的ひろい面積のエントランスになってる。
 歩道の端に車止め用と思しきポールが何本も立ってるんだけど、それを抜いてスロープを開放すれば、建物のすぐ前まで車を寄せられるんだよね。
 障害のある人が利用する車とか、足元の覚束ないお年寄りが呼んだタクシーとかは、そこまで入れてやればいいのに……と思ってた。
 せっかく、警備員が常駐してるんだからさ。
 利用者の便宜を図ればいいのに、と。
 でも、そういう場面には一度も遭遇したことがないので、
「あのエントランスんとこの白い敷石が、実は上等な石で車が乗り入れられないとか?
 私、雨の日なんて、あそこでカサ引きずって歩いてるよ(汗)」
 などと、一人あせったりもしていた。
 
 ところが、今日のこと。
 建物の前に看板が出てた。
 どうやら、「愛知県功労者の集い」とかってのものをやってて、要は「県の役に立った人を表彰しましょう」みたいな会合らしい。
 当然のことながら、県のお偉いさんだの何だのが来てたものと推測されるんだけど……
 
 なんでエントランスまで車が入ってんだよ?
 
 それも「いかにも公用車でござい」てな感じの、黒い高級セダン(国産)が2台も!
 あのさ。
 こういう催しんときに、そういうことができるんだったら、普段から入れてやれよ、利用者の車を。
 そりゃ、普通に駐車場を使えば良いような人の車まで許してたら際限ないし、それはそれで問題あるかもしれないけど、たとえば、身体が不自由な人とか、素早く動けないお年寄りとか、優遇するべき人もあるだろうに。
 もともと「お役所」な施設だから融通が利かないのかもしれないけど、利かないのにも程がある、と思ったね。
 ふだんは、周辺住民に迷惑かけまくって、こっちが苦情を言ってもロクに相手にしようともしないくせに、お偉いさんが相手だと応対に万全を期すわけだ。
 
 ……今度から、苦情を入れるよりも警察に通報しよう、と思わず誓ってしまう午後なのだった。