本日のお言葉

 
 週に3日ほど、公民館の受付に座っている。
 受付嬢、などという上等なものではなく、掃除から電話番、使用手続きの受付など、何でもやる「雑用係」みたいなものだ。
 
 今日も受付に座っていたのだが、午前中に会議がひとつ入っていた。 
 地区の民生委員さんたちの会議で、座長はお寺の御住職だ。
 お寺が保育園をやっていて、そこの園長先生でもあり、地区の行事ではよく顔を合わせるので、私のことも見知っていただいている。
 その御住職、委員さんたちが揃ったかな、というころに公民館にいらっしゃった。
 あまり早くから上の者が座ってると、他の人が気を遣って、もっと早く来なきゃならなくなるから……と、いつも少し遅めに登場されるのだ。
 入ってくるなり、受付にいた私に向かって、
「まぁはい(=もう)、桜も終わりだなぁ」
 と、おっしゃった。
 私が、
「そうですね。あとは散るばかりのようで……」
 と、お返事すると、
「毎年毎年、花見をしようと思っては、しそびれるで嫌んなってまうわ(=しそこなってしまうので、嫌になってしまう)。
 で、毎年毎年、そう言って、ぼやいとるんだわなぁ」
 と豪快に笑われた。
 その後で、呟くように、
「ほんでも、ぼやいとるうちが華だでね。
 ぼやきも出来んようなったら、それは死ぬときだわ」
 と、おっしゃって、会議室へと入っていかれた。
 
 あとに残った私、「なるほどなぁ……」と感じ入ったものだ。
 ぼやきたいときには、ぼやいておいたほうが、確かに長生きできそうな気がするし。
 思わず、閉じられた会議室の扉に向かって合掌してしまう私であった。