気持ちは解る

 
 年の瀬も押しつまり、いろんな人が亡くなって、いよいよ世界情勢だの日本経済だのが混沌としてきた感がある。
 私のような一主婦は、日々の生活に追われるなか、師走の雰囲気を悟るのが精いっぱいだが、それだけに、ほんの小さなことでも喜んだり悲しんだりできるんだから、ある意味、得なのかもしれない。
 
 今日、仕事に行く前にコンビニに寄った。
 3時のおやつのために、何かお菓子を買っていこうと思ったのだ。
 おいしそうな栗まんじゅうがあったので、それを選んでレジへ。
 レジ台のうえに、ころん……と置いたら、レジの女の子が、
「うわ、まただ!」
 と、小さく舌打ちをした。
 一瞬「え?」と思ったのだが、どうやら、この栗まんじゅう、包み紙が、まんじゅうの形に沿って丸くなっていて、バーコードが読みとりづらいらしい。
 もちろん、それは私のせいじゃないし、それを理由にレジの女の子に舌打ちされるなど、いわれなく失礼な行為をされたのに等しいから、文句を言っても良かったのだが、つい、
「ごめんなさいね」
 と言ってしまった。
 書店で働いてたとき、ボールペンの細い軸に刻まれたバーコードだの、型抜きの消しゴムに貼られて複雑にネジ曲がってるバーコードだのと格闘してきた身としては、レジの女の子の気持ちが痛いほど解ったからだ。
 女の子のほうも、すぐに気がついたのだろう。
「あ、違うんです! すみません!」
 と頭を下げて、一所懸命に包み紙を伸ばしてバーコードを読んでくれた。
 そして、
「寒くなると、おまんじゅうにお茶って良いですね」
 と言った。
 彼女にしてみれば、自分が不用意に口にしてしまった一言を、なんとかしてフォローしたかったんだと思う。
 そして、私には、その気遣いが嬉しかった。
「そうね。熱いお茶におまんじゅうって美味しいですよね」
 と笑うと、彼女もホッとしたように笑ってくれた。
 
 たったそれだけのやり取りだったが、なんだか妙に温かい気持ちになった。
 それだけ世の中が厳しくなってるってことなのかもしれない。
 それでも私は、こんなやり取りができるだけ、まだまだ世の中、捨てたもんじゃないと思うし、少しは余裕があるんじゃないかな、と思ったりもする。
 いろいろ大変なことも多いけど、ま、おたがい頑張りまっしょい。