私の常識は世間の非常識

 
 少し前の話になる。
 秋葉原無差別に9人が殺傷されるという事件が起き、新聞の一面で色々と報道がなされていたころのこと。
「犯人は複数のナイフを所持していた」という記事で、何本ものナイフが並べられた写真が掲載されていた。
 ナイフの傍らには、マイルドセブンの箱が置いてあって、刃渡りとかが一見して判るようになってて。
 ああ、こんな事件でも大きさの比較はやっぱり煙草でするんだね……なんて、妙なところで感心してたんですが、それはともかく。
 何本も並んだナイフを見て、言いましたよ私は。
 
 私「こんなにナイフを用意してたってことは、よっぽどたくさんの人数を刺すつもりだったんだね。
    すんごい計画的じゃん。怖いなぁ」
相方「たくさんナイフ持ってるからって、大勢を刺すつもりがあったとは言い切れないでしょ」
 私「なんで? たくさん刺したらナイフが切れなくなるから、予備を持ってたってことでしょうが。
   計画的やんか」
相方「……普通の人は、ナイフで人を刺すごとに切れ味が落ちてく、なんてことまで思い至らないんじゃないか?」
 私「へ? だって、血とか脂とか付くから、切れなくなるに決まってんじゃん」
相方「犯人は、そこまで考えてなかったと思うよ。
   実際、靴下だかに挟んでた1本のほかは、ほとんどがトラックの中に置きっぱなしだったらしいし」
 私「嘘?! マジで? だったら、なんでこんなにたくさん持ってたんだよ?」
相方「単純に持っていたかったんじゃないの?
   あのね。フツーの人は、日本刀でも何人も切ったら切れ味にぶるなんて気づいてないから」
 私「なんでだよ?! そんなん常識じゃんっ!」
相方「キミの常識は世間の非常識なの!」
 私「とほ〜……(汗)」
 
 うぅむ、そうか。
 私の常識は世間の非常識だったのね。
 つか、普通の人は、あの並べられたナイフの写真を見て、
「たくさん持ってたんだ。怖いねぇ」
 とは思っても、
「予備のナイフをこんなに持ち歩いているとは、用意周到な大量殺人計画なんだな」
 とは思わないわけか。
 私って荒んでるのかしら……(汗)