あんたに薦められたくない

 
 寡作ながら、大好きな作家さんの新刊(文庫)を見かけたので、喜んで買ってきた。
 が。
 帯が気に入らない。
 某女優が「読んでてドキドキしました」とコメントしてるのが顔写真入りで刷ってある。
 裏表紙の「あらすじ」のところにも、この女優の名前が入ってて、彼女が推薦してるシリーズだという旨が書いてある。
 はっきり言うが、余計なお世話だ(怒)
 この女優が、かの明治の女流文筆家・樋口一葉を演じているのを視たことがあるが、本を読むシーンの所作がなってなかった。
 本好きにあるまじきページのめくり方、「食い入るように読む」シーンであるにも関わらず、本の内容に興味を持ってるようには見えない薄っぺらな演技……
 たとえ、本人が本好きでなくても、かりにも文筆家を演じようと云うのだ。
 本を手にする所作や、その扱いについて、もっと追究して然るべきではないのか。
 だって、女優なんだから。
 まして、この某女優、某旧帝大出なのを「売り」にしていたはず。
 たとえ理系の出であっても、作家を演じるとなったら、本を読む所作ぐらい、まともに演じてほしい。
 
 そんなわけで。
 この女優、とてもじゃないが、三者に本を推薦できるような人には思えない。
 つか、傲慢を承知で言わせてもらうが、おそらく、彼女よりも私のほうがたくさんの本を読んでいる。
 私よりも少ない読書経験しか持たない人に、私の大好きな作家の本をわざわざ推薦してもらう必要なんて、ないんである。
 なのに何故、裏表紙にまで登場してるんだ。
 そのあたりが、どうにも納得いかない。
 こんな形で、推薦人を紹介する小学館(版元)の見識にも一抹の不安を覚えた出来事ではあった。
 
蘭方姫医者書き留め帳一 十字の神逢太刀 (小学館文庫 お 28-1 蘭方姫医者書き留め帳 1)