貴様に呼ばれる筋合いはない。
なんだか呆として日々を過ごしているあいだに、またも幾つかの訃報に接し、正直なところ、落ち込んでたりする。
漫画家のやまだ紫さんや、囲碁の藤沢棋聖、作曲家の三木たかし氏などの訃報を聞くたびに、いわく言いがたい空虚感に襲われて鬱々としてたんだが、その鬱々を吹っ飛ばすような電話が掛かってきた。
時刻は夜の9時すぎ。
最近の私だと、おきているのもツラくなって横になろうとする時刻だ。
手近にあった子機が鳴ったので、よたよたと出てみたら、
「おかあさまですか?」
と、いきなり尋かれた。
「誰の、ですか?」
と返すと、
「小中学生をお持ちのおかあさまですよね?」
と重ねての問い。
「はぁ……」
と曖昧な返事をしたところ、
「今日は、おかあさまに家庭教師のPRでお電話させていただきました。
おかあさま、お子さんの家庭学習について、お悩みではありませんか?
そういったおかあさまの悩みを解決するために──」
立て板に水のごとく、セールストークに突入してる、そこの男。
ちょっと待て。
私は、貴様に「おかあさま」呼ばわりされる筋合いはない(怒)
どこの何者か名乗りもせんヤツに「おかあさま」「おかあさま」と連呼されて喜ぶと思うなよ。
私 「我が家は、これ以上は教育費を出すつもりがありませんので、お話をうかがうことはできません」
男 「そうなんですか。塾とかに行ってらっしゃる?」
私 「娘は中学で面倒を見てもらってます。
息子は私が見てます。これ以上は必要ありません」
すっぱり言い切ったのが効いたのか、男は、ごにょごにょと言葉を濁して撤退していった。
簡単に撤退してくれて良かったよ(苦笑)
今は相手をするだけの精神力も、そんなには残っていないんだから。
ねばられたら相方に替わってもらうつもりだったので、危機感を感じてたわけではないのだけれど、不愉快な相手に時間を取られるのは真っ平御免だ。
でも、よく掛かってくるんだよね、子どもの教育関係のセールス電話。
家庭教師にかぎらず、家庭学習のプリントは如何でしょうだの、副教材をセットでどうぞだの。
要らんっちゅうねん、もぉ……