すかぽんたんにも程がある

 
 もともと、そんなに好きではないんである。
 だから、今さら新作が発表されたところで、ぶつくさ文句を言うのがズレてると言えないこともない。
 でも。
 さすがに、今回はぶつくさ度(笑)が上がったね。
 
スタジオジブリの最新作「借りぐらしのアリエッティ」公式サイトオープン
 
 監督がインスマウスのアニメーターだとか、そんなことは、どうでもよろしい。
 問題は、1953年に出版された(その当時の)物語の舞台を現代の日本に移してしまうという、「大胆な改変」という言葉では説明しきれない原作への冒瀆ぶりにある。
 なんで、そんなに大胆なことができるのか。
 私には、この映画を企画した人の脳味噌が理解できない。
 一般人には理解できないほどの偉大な脳味噌なのかもしれんが、そんなすかぽんたんの脳味噌など、理解したくもない。
 原作で、アリエッティと交流を持った男の子は「英雄的な戦死」を遂げている。
 現代の日本で、アリエッティと交流を持った男の子は、何処へ行くんだ?
 必ず来る「別れ」を、うわべだけ美しい思い出話に昇華するつもりなのか?
 借り暮らしたちの「生き方」も歪曲されている。
 ゴキブリや白アリと闘わなきゃならなかったり、バルサンやホウ酸団子から身を守らなきゃならないような場所に、借り暮らしたちが住むかどうかを冷静に考えてみるがいい。
 原作の彼らは、人間から「もの」を借りられなくなったとき、野原へ出る道を選んだ。
 つか、それこそが「借り暮らし」の暮らし方なのだ。
 それも判らんくせに、なにが現代の日本にこそ相応しい暮らし方、だ。
 
 ま、映画になるってことなんで、ありがたいことは、岩波少年文庫が再版かけてくれるだろうってことぐらいかね。
 カバーがジブリ絵になるかもしれんが、それは何とでもなるし。
 ただ、林容吉氏(『メリー・ポピンズ』シリーズの翻訳もしておられる)の、あのすばらしい訳を変えることはしないでほしい。
 借り暮らしの小人たちの姿を、あれほど活き活きと感じとることができたのは、林氏の翻訳に拠るところが大きいと思っている。
 ああいう名訳こそ後世に残すべきだろう。
 たとえ、映画は残らなくてもね。