便利な時代

 
 うちの両親、またも「あとはよろしく」と言いのこして、渡欧してしまった。
 なにやら、シリーズで開催されてる音楽祭を続けて鑑賞するとかで、ずっと同じペンションに泊まって、音楽三昧の日々を送るんだそうである。
 まぁ、向こうで車を借りて、あっちこっち走りまわられるよりは、一ヵ所にじっとしてくれてたほうが、こっちとしては安心かもしれない。
 元気そうに見えて、二人とも七十代だから、あまり知らない土地をうろちょろしてほしくないというのが本音なのだ。
 万が一のとき、ホネ拾いに行くにもヨーロッパは遠いしね(をい)
 
 さて。
 そんな両親だが、音楽祭ばかりという日々にも、ちょいと飽きたらしい。
 会場の近くにある、標高2080mの山に登るから、とメールが来た。
 ロープウェイで登ることができるうえ、その山頂駅にライブカメラがあって、15分ごとに映像が更新されるらしい。
 
「──というわけだから、山頂に近づいたらメールする。
 カメラに写ってたら、画像を保存しといてくれ」
 
 こんなメールがリアルタイムで届いて、しかも、映像までライブカメラをチェックすれば見られるんだから、便利な世の中になったもんである。
 結局、山頂駅に着いたときと、周囲を散策して戻ってきたときの2度、両親は無事ライブカメラ「出演」し、日本にいる私と息子は、
「小っちゃっ!(汗)」
 と、正直な感想を漏らしたのだった。
 いや、だって、もうちょっと大きく写るのかと思ったら、思ったよりも広い範囲を撮影してるらしくて、人間の姿なんて爪の先ぐらいにしか写らないんだもの。
 それでも、見慣れた両親の姿ぐらいは判別できるので、なんだかホッとした。
 雪が残ってて、霧の濃い山頂だったけど、元気に楽しんでるんだなぁ……と思って。
 そして、写メとか送ってもらうのもいいけど、こういう形で姿が見られるのも楽しいもんだなぁ……と感心したのだった。
 面白いから、他にもライブカメラあるとこ、行ってくれないかなぁ(笑)