考えたら失礼な話なわけで

 
 夏の高校野球全国大会を視ていた。
 和歌山県代表・智辯学園和歌山高校日大三高に敗れ、準々決勝への進出ならずに夏を終えたところだ。
 
 この智辯学園和歌山高校」の表記だが、新聞もテレビ放映の字幕も、すべて智弁となっている。
 最近、やたらと引き合いに出して恐縮だが、以前に読んだ高島俊男先生の本所収の「全部ベンの話」という項に、この学校の校名の由来が書いてあった。
 それによると、「智辯」というのは、学園創始者である「大森智辯という女性の名前から取られたものだと云う。
 これは、れっきとした戸籍名とのことなので、「智辯学園」は智弁学園」と表記するべきではないという学園関係者からのお便りを紹介しておられた。
 とは云え、現在の常用漢字のなかに「辯」という漢字は存在しておらず、したがって、マスメディアも「智弁学園」と表記してるんだろうが……考えたら、失礼な話だよね。
 簡略字での表記はするべきではない、と学園側が言ってるのに、お国が勝手に定めた規則に従って、新聞もテレビも右に倣えの「智弁」表記だ。
 選手のユニフォームにも、スタンドの横断幕にも智辯学園とハッキリ書いてあるのに。
 そこは、学園本来の表記に従うところだろう。
 妙な規則に凝りかたまって、本来の漢字の使いかたを忘れちゃうと、ロクなことになんないと思うんだけどねぇ……
 
 お言葉ですが…〈2〉「週刊文春」の怪 (文春文庫)
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