ルビと音とは違うんだな

 
 今日(2011.8.7.)付の朝日新聞天声人語」欄では、久々に首をかしげた。
 ようやく本格的な夏になった、という話だ。
 関東・東北地方では長い梅雨寒の期間があったため、夏の風物詩である(原文は正字しぐれが、ようやく最近になって佳境になってきた、とある。
 そして、梅雨寒の期間を指して、

 節電にはよかったが、赫々たる太陽も蝉(原文は正字)の声もなしではどこか寂しい。

 
 とある。
 
 問題は「赫々たる」である。
 ここに「かっかく(たる)」とルビが振ってあった。
 いまや、私のATOKですら「かっかくたる」と打ちこまないと「赫々たる」が出ないんだから、これが正解となってしまったのかもしれないが、やはりここは「かくかく(たる)」としてほしいところだ。
「洗濯機」のことを、口では「せんたっき」と言っていても、ルビを振るならば「せんたくき」であるように、「赫」の字の読みは「かく」なんだから、「かくかく(たる)」と振ってほしい。
 もちろん、口に出して読むときは「かっかくたる」で、いささかの問題もないだろう。
 ただ、文字の「読み」としては違うんじゃないかな、と思うのだ。
 
 そして、「赫々たる」の意味なんだが……主たる意味は「光り輝く」ということだ。
 この文章で取りあげられている太陽の様子──夏の、ぎらぎらした熱線を発する熱い太陽というのとは、ちと違うように思う。
 御来光のような太陽を表現するには適切かもしれないが、夏の暑さを表現するには、どんなもんだろうか。
 もうちょっと違う表現のほうが解りやすいんじゃないかなぁ、と思う次第である。
 
 ところで、上の文章で、いちいち「蝉(せみ)」は「原文は正字」とことわってきたわけだが、例の603字を書写して云々という勉強をしている人たちは、この字を正しく「正字」で書写しているんだろうか。
 なまじ字を知ってる人間ほど、「蝉」と簡略字体で書いちゃってるような気がする。
 学校での学習として書きうつしをしている場合、先生はちゃんとチェックするのかなぁ?
 そのあたり、なんだか、すごく興味がある。
 
 もうひとつ、ついでに。
 この「口での音」と「字のルビ」との違いについては、高島俊男先生のお言葉ですが…2「週刊文春」の怪』(文春文庫)に収録されている「テーコクリッカイグンワ…」に詳しい。
 なるほどなぁ……と膝を打って読んだものである。
 
 お言葉ですが…〈2〉「週刊文春」の怪 (文春文庫)